本の紹介

今回は、2冊の本をご紹介したいと思います。

最初は、『「ひきこもり」の30年を振り返る』です。

この本は、研究者(大学教授)である石川良子さん、ひきこもり経験者として当事者の声を伝える活動をしている、今年ホープ&ライフで講演してくださった林恭子さん、精神科医の斎藤環さんの3人によるシンポジウムをもとに、加筆した部分を含めて、書籍化されたものです。岩波ブックレットで、ページ数も多くなく、とても読み易い本ですが、ひきこもりについて、歴史的な背景も含めて、よくわかる本になっていると思います。

この3名の方が、横並びになって、自分のことも含めてひきこもりについて語っています。その内容は、読む者に希望を抱かせると感じました。立場が違えば、視点や考え方が違って当然ですが、違いがあっても一致できるところで一致して取り組んでいく姿勢を見るからです。

内容では、不登校についても触れられているところがあり、不登校と大人のひきこもりをつなげて考えたい人にとって、とても有用です。また、“はじめに”で、石川さんが書いていることに本当に同感しました。

――最終的に目指すべきは「ひきこもり」が問題にならない社会であると考えているからです。百万を超えると推計されるほどに多くの人々をひきこもらせているのは、「「ひきこもり」とはあってはならない悪しきものだ」というまなざしにほかなりません。そして、ご本人も自らを認められないがために、ひきこもらざるを得ないのです。逆に言えば、ひきこもっているのは悪いことでも何でもないと思うことができれば、おそらくひきこもらずに済むはずです。―― (『「ひきこもり」の30年を振り返る』p4より)

このことは、不登校についても同じことが言えるのではないでしょうか。社会全体の考えを変えるのは容易なことではありませんし、国民性に起因する部分もあるでしょうから、なおさら難しい問題です。だからと言って放置せず、考え続け、伝えるべきことを伝え続け、ひとりでも苦しむ人がなくなるような活動を親の会としてもできたらと思った次第です。

この本は、世話人個人が購入したものですが、例会で手に取ってみていただくことができますので、ご興味のある方は世話人にお尋ねください。

本の紹介2冊目は、『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』です。

オープンダイアローグはご存じでしょうか?フィンランド発のグループ対話療法で、投薬せずに精神疾患等を治すというものです。私は以前やはり斎藤環さん著+訳の『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)という本を読み、とても興味があり、市のセミナーにも参加したことがあったので、この本も読んでみることにしました。

内容は、事例紹介はまんがで描かれ、解説は文章になっていて、読み終わるのに2時間かからないと本書にも書いていますが、その通り気軽に読めて、よくわかる本です。

オープンダイアローグについては、この本を読んでいただくのがいちばんですが、私が興味を持ったのは、患者(あるいは、患者と位置づけされている人)と対話を続けていく時、勝手に変化(改善や治癒)が起こってしまうということはもちろん、対話する側はネガティブなことは絶対言わず、アドバイスせず、対象人物に共感し、その人を尊重する態度を取り続けていくことです。そこに、その人を責めず、裁くことなく、尊重し、大切に接していくことに大きな感動を覚えます。結局、誰もが求めているのはこのような関係ではないでしょうか。

フィンランドの事例では、統合失調症やうつも治ってしまうということが起こっているそうです。ただ、2021年3月初版の本書よると、日本では今、大変注目されてはいるけれども、公式にオープンダイアローグによる治療を行っている医療機関はないということです。

私が注目しているのは、オープンダイアローグの手法を親子の対話にも取り入れていくことができるのではないかということです。親子や家族間では、関係が密接なので、他者がやるようにはいかない面もあると思います。ですが、オープンダイアローグの手法は、相手を尊重し、大切にしていくので、そこを学ぶことができると思います。

ご興味のある方は、こちらの本も世話人が持参しますので、見てみたい方は例会でぜひどうぞ!